結婚アドバイザー認定試験
学習資料
3.結婚式のスタイルについて
結婚式は人生の節目を祝う大切な儀式であり、そのスタイルは新郎新婦の価値観や宗教観、家族の意向などによってさまざまに選ばれます。
日本では、伝統的な神前式、西洋風のキリスト教式、形式にとらわれない人前結婚式、そして仏教に基づく仏式結婚式といった多様なスタイルが存在します。それぞれに独自の意味や儀式の流れがあり、式の雰囲気や進行にも違いが見られます。
以下では、これら4つのスタイルについて、一般的な流れをご紹介します。ただし、実際の式の進行や内容は、会場や地域、新郎新婦の希望によってアレンジされることが多く、たとえばカジュアルな雰囲気を重視する場合や、アカデミックなテーマ、あるいは親しみやすさを大切にしたスタイルを望む場合など、それぞれの思いに合わせて多様に変化します。
そのため、ここで紹介するのはあくまで一例としてご覧ください。

(1)神前式の流れ
神前式とは、神道の神々に結婚を報告し、夫婦としての契りを誓う日本の伝統的な挙式スタイルです。厳かな雰囲気の中で進行し、家と家との結びつきを重視する点が特徴です。古式ゆかしい作法に則って進められるため、一つひとつの儀式に深い意味が込められています。以下は、一般的な神前結婚式の流れをご紹介します。
- ①入場
巫女に先導されて、新郎新婦、媒酌人夫妻(仲人)、両親、親族の順に入場します。全員が揃った後、最後に斎主(神主)が入場し、式が始まります。
- ポイント
神社によっては、雅楽の生演奏や巫女による神楽舞が披露されることも。また、ウエディングドレスでの挙式が可能な場合もあります。細かな希望や演出については、遠慮せず事前に相談してみましょう。
- ②修祓の儀(しゅばつのぎ)
斎主が祓詞(はらえことば)を唱え、大麻(おおぬさ)を振って、参列者の心身のけがれを祓います。一同は頭を下げてお祓いを受けます。
- ③祝詞奏上(のりとそうじょう)
斎主が神様に結婚の奉告を行い、両家と新郎新婦の幸せを祈願します。祝詞が読み上げられている間、一同は頭を下げて静かに拝聴します。
- ④三献の儀(三々九度の杯)
小・中・大の三種の杯を用い、新郎新婦が交互にお神酒を注ぎ合い、三口ずつ飲み交わします。夫婦の契りを結ぶ大切な儀式です。
- ⑤誓詞奏上(せいしそうじょう)
新郎新婦が神前に進み、誓いの言葉が書かれた「誓詞」を読み上げ、夫婦としての決意を神様に誓います。
- ⑥玉串奉奠(たまぐしほうてん)
神様とご先祖への感謝を込めて、玉串(榊の枝に紙垂を付けたもの)を神前に捧げ、これからの幸せを祈願します。まず新郎新婦が行い、続いて媒酌人、親族代表の順に玉串を奉奠します。
- ⑦指輪の交換
新郎・新婦の順に結婚指輪を交換し、永遠の絆を象徴する儀式を行います。
- ⑧親族杯の儀(しんぞくはいのぎ)
両家の結びつきを深めるための杯の儀式です。両家の親族全員がお神酒を三口で飲み交わし、親族同士の縁を確認します。
- ⑨退場
斎主が挙式の終了を告げた後、一同が神前に一礼します。斎主に続いて、新郎新婦、媒酌人夫妻、両親、親族の順に退場します。
(2)キリスト教式の結婚式の流れ
※プロテスタント形式の一般的な式次第です。宗派や式場によって、内容や順番は異なる場合があります。
- ①参列者の入場
親族や友人などの参列者が入場し、新婦側は左側、新郎側は右側の席に着席します。バージンロード沿いの席が空かないよう詰めて座るのがマナーです。入場時はバージンロードを踏まないよう注意しましょう。
- ②牧師と新郎の入場
牧師に続いて新郎が入場し、祭壇に向かって右側に立ちます。入口の方を向いて新婦の入場を待ちます。
- ③開式の辞
牧師が結婚式の開式を宣言し、式が正式に始まります。
- ④新婦の入場
新婦は父親(または代わりの親族)とともに入場します。右手で父の腕を取り、左手にブーケを持ち、バージンロードをゆっくり進みます。祭壇の左側に到着したら、新郎が新婦の手を父から受け取り、二人で並んで祭壇前へ進みます。
※父親が新婦の肩にキスや握手などをして娘を送り出すこともあります。
- ⑤讃美歌斉唱
新婦の父が着席したタイミングで参列者全員が起立し、讃美歌を斉唱します。選ばれる曲は式場によって異なりますが、「いつくしみ深き」などが定番です。
- ⑥聖書朗読・祈祷
一同が着席した後、牧師が聖書から結婚にまつわる一節を朗読し、ふたりの結婚に神の祝福を願って祈祷を行います。参列者は心を込めて静かに聴きましょう。
- ⑦誓約
牧師が新郎・新婦に対して結婚の誓いを問いかけます。二人はそれぞれ「はい、誓います」と答え、結婚の意思を明らかにします。
- ⑧指輪の交換
結婚の証として、まず新郎が新婦の左手薬指に、続いて新婦が新郎の左手薬指に指輪をはめます。
- ⑨ヴェールアップと誓いのキス
新郎が新婦の顔にかかっているヴェールを上げ、二人の間に隔てるものがないことを象徴します。その後、誓いのキスを交わします。
※教会によっては「誓いのキス」を省略する場合もあります。
- ⑩結婚宣言
新郎新婦が祭壇の前で参列者の方を向きます。牧師が二人の結婚を正式に宣言し、神の祝福を祈ります。
- ⑪結婚誓約書(結婚証明書)への署名
新郎・新婦・牧師(または証人)が結婚誓約書または結婚証明書に署名します。署名は証しとして神と人々の前で行われます。
- ⑫讃美歌斉唱と閉式の祈り
再び全員が起立し、結婚を祝う讃美歌を斉唱します。その後、牧師が閉式の祈りを捧げ、夫婦として歩み出す二人を祝福します。
- ⑬新郎新婦の退場
牧師が式の終了を宣言します。新郎新婦は腕を組んでバージンロードを退場し、参列者の祝福を受けます。
※ライスシャワーやフラワーシャワーなどの演出が加わることもあります。
- [キリスト教式のポイント]
- 宗派による違い
カトリックではミサを伴う荘厳な形式があり、プロテスタントとは流れが異なります。
- 衣裳や演出の自由度
教会によっては讃美歌の選択や誓いの言葉を自由にアレンジできることもあります。事前に確認をするとよいでしょう。
(3)人前式の一般的な流れ
人前式(じんぜんしき)は、宗教や形式にとらわれず、参列者すべてを証人として行う自由でアットホームなスタイルの結婚式です。自分たちの言葉で誓いを立て、ゲストの前で結婚の成立を宣言する点が特徴で、オリジナリティにあふれた演出が可能です。
人前式の一般的な進行例をご紹介します。
- ①新郎新婦の入場
新郎・新婦の順に入場します。新郎新婦が一緒に入場するスタイルや、それぞれが両親と手を取りながら入場するスタイルなど、自由な演出が可能です。
※入場時にBGMを流したり、参列者の拍手で迎えることもあります。
- ②開式の言葉
式の進行役(司会者または友人など)が結婚式の開式を宣言し、新郎新婦の紹介を行います。
※自ら司会を立てず、ナレーションなどを使うケースもあります。
- ③誓いの言葉の朗読
新郎新婦が事前に考えた「誓いの言葉」を読み上げ、互いへの想いと結婚への決意を参列者に向けて伝えます。
※オリジナル文章にするほか、詩や名言を取り入れるなど自由度が高いのも魅力です。
- ④指輪の交換
新郎→新婦、新婦→新郎の順に、結婚指輪を交換します。
※リングピローを子どもが運ぶ「リングボーイ・ガール」などの演出を入れることもあります。
- ⑤結婚証明書や婚姻届への署名
新郎新婦が順にサインを行い、その後、立会人(親、親友、兄弟姉妹など)が証人として署名します。
※結婚証明書はオリジナルでデザインしたり、ゲスト全員の署名を加える「ゲスト署名式」も人気です。
- ⑥結婚成立の宣言
進行役または立会人が、「ここにお二人の結婚が成立したことを宣言します」と述べ、参列者が拍手でそれを承認します。
※この瞬間が、人前式における“法的ではないが、社会的な承認”の象徴です。
- ⑦新郎新婦のあいさつ
新郎新婦から参列者や家族へ、感謝の気持ちを伝えるスピーチを行います。
※このタイミングで両親への花束贈呈や、サプライズ演出を行うこともあります。
- ⑧閉式の言葉
進行役が結婚式の閉会を宣言し、式は一旦終了します。
- ⑨退場
新郎新婦が手を取り合って退場します。ゲストが花びらや紙吹雪をまく「フラワーシャワー」や、「バブルシャワー」などの演出もおすすめです。
- [人前式のポイント]
宗教色がないため、場所や進行内容の自由度が高く、ガーデン、レストラン、フォトスタジオなど幅広い会場で行えます。形式よりも「自分たちらしさ」「ゲストへの感謝」を重視するカップルに支持されています。
法的には、結婚届を役所に提出することで婚姻が成立しますが、人前式はその誓いを“社会的に宣言する場”です。
(4)仏前式の一般的な流れ
仏前式は、仏様の前で結婚を誓い、夫婦としての新たな門出を仏教の教えとともに迎える厳粛な挙式形式です。ご先祖や両家の縁に感謝し、仏の加護を受けて生涯の契りを結ぶことを意味します。宗派や寺院によって進行に違いがあります。
仏前式の一般的な進行例をご紹介します。
- ①列席者および新郎新婦の入堂
まず、新郎新婦の両親・親族が本堂へ入堂します。ご本尊に向かって右側に新郎側、左側に新婦側の親族が着席します。続いて、新郎新婦と媒酌人夫妻が入堂します。
- ②僧侶の入堂
司婚を務める僧侶が入堂し、仏前に焼香します。参列者一同も合掌し、厳かな雰囲気の中で式が始まります。
- ③啓白文(けいびゃくもん)朗読
僧侶が結婚式を仏前で執り行うことを仏様に報告し、新郎新婦の幸せと結婚生活の無事を祈る啓白文を朗読します。
- ④念珠授与
仏前に供えられた二つの念珠(数珠)を、僧侶が新郎新婦に授けます。二人は念珠を左手の親指以外の4本の指にかけ、合掌します。
これは、仏とのつながりを象徴する大切な儀式です。
- ⑤司婚の辞
僧侶が「司婚の辞(しかんのじ)」を読み上げ、新郎新婦は僧侶の問いかけに対し、結婚の誓いを言葉で交わします。
- ⑥新郎新婦の焼香
念珠を左手にかけたまま、新郎・新婦の順に仏前で焼香を行います。仏様に、今後の結婚生活を見守っていただけるよう願いを込めます。
- ⑦聖杯(せいはい)の儀
新婦→新郎→再び新婦の順で、お神酒を三口でいただきます。
これは、神前式における「三々九度」に相当し、夫婦の契りを意味します。
- ⑧親族固めの杯
新郎新婦に続き、両家の親族が順に杯を交わし、両家が新たに親族として結びついたことを確認し合います。
- ⑨法話(ほうわ)
僧侶が新郎新婦の門出を祝い、仏教の教えに基づいた祝福と導きの言葉(法話)を述べます。
これにより式がより深い意味を持ちます。
- ⑩退堂
全員が起立し、合掌して仏前に一礼をします。僧侶が先に退堂し、その後に新郎新婦、媒酌人夫妻、両親、親族の順にお堂を後にします。
- [仏前式のポイント]
- 指輪交換のセレモニーも可能
仏前式でも指輪交換を取り入れることができます。その場合は「司婚の辞」の前に行うのが一般的です。
- 宗派による違いに注意
仏前式の進行や作法は宗派によって異なります。新郎新婦の宗派が異なる場合は、原則として新郎側の宗派に合わせて進行されます。事前にお寺とよく相談しておきましょう。
(5)個性的な挙式
結婚式のスタイルは、上記のような伝統的な形式に限らず、より個性を重視した自由なスタイルを希望する方も増えています。たとえば、クルーズ船上での結婚式や、美術館、博物館、テーマパーク、レストラン、ガーデンなど、ふたりの趣味や思い出の場所にちなんだユニークな会場を選ぶケースもあります。
このような「場所」にこだわった結婚式は、式自体が特別な体験となるだけでなく、ゲストにとっても印象的な時間となります。
こうした個性的な会場で行う結婚式の一例をご紹介します。
- ①クルーズ結婚式
海の上で行うクルーズウェディングは、非日常感あふれるロマンチックなスタイルです。船上からの美しい景色を楽しみながら挙式や披露宴が行えるため、まるで映画のワンシーンのような時間を演出できます。夕景や夜景の時間帯に合わせることで、さらにドラマチックな雰囲気に。小規模な貸切プランも多く、アットホームな式を望むカップルにも人気です。
- ②美術館・博物館での結婚式
芸術や歴史が好きなカップルに選ばれるのが、美術館や博物館でのウェディング。非日常的な空間の中で、静かで厳かな雰囲気を味わいながら式を挙げられるのが魅力です。館内の展示物に囲まれた挙式は、他にはない特別感を演出でき、アートに囲まれた写真撮影も人気です。
- ③ガーデンウェディング
自然に囲まれた屋外で行うガーデンウェディングは、ナチュラルで開放的な雰囲気が特徴です。季節の花々や緑に囲まれながら、カジュアルで温かみのある式を実現できます。自由度も高く、装飾や演出も思いのまま。お子様連れのゲストにも過ごしやすい環境です。
- ④レストランウェディング
料理を重視するカップルに人気なのがレストランウェディング。お気に入りのレストランで、美味しい料理とともにゲストとの距離が近いアットホームな結婚式を実現できます。挙式から披露宴まで行える会場も多く、カジュアルながらも洗練された雰囲気を演出できます。
- ⑤テーマパークウェディング
ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオなど、テーマパーク内でのウェディングも人気の一つ。好きなキャラクターや物語の世界に包まれて挙式ができるため、まさに夢のような体験になります。ゲストにも忘れられない思い出を提供できる、エンタメ性の高い結婚式です。
このように、結婚式のスタイルは伝統にとらわれず、自由な発想で創り上げることができます。ふたりらしさを表現できる場所や演出を選ぶことで、唯一無二の特別な一日を実現できるでしょう。
(6)海外挙式の魅力と人気エリア
大切な結婚式を、思い出に残る特別な場所で――。そんな想いから、海外での挙式を選ぶカップルが年々増えています。美しい景色のなかで愛を誓い、そのまま新婚旅行も楽しめるのが海外挙式の大きな魅力。
ここでは、実際に多くのカップルが選んでいる人気のエリアをご紹介します。エリアごとの特徴や魅力を知ることで、おふたりにぴったりの挙式スタイルがきっと見つかるはずです。
- ①ハワイ(58.4%)
自然に囲まれた美しいリゾート地・ハワイは、海外挙式の定番ともいえる人気エリアです。日本語が通じやすく、安心して準備が進められるのも大きな魅力。挙式と新婚旅行を兼ねて訪れるカップルも多く、現地のコーディネーターも経験豊富なので、スムーズなサポートが期待できます。チャペルやビーチなど、選択肢も豊富で、理想のウエディングを実現しやすい環境です。
- ②グアム(20.4%)
日本から約4時間のフライトで行けるグアムは、時差がわずか1時間と、ゲストへの負担が少ないのが魅力。年配の家族や小さなお子さまも参加しやすく、「忙しい友人にも来てもらいやすい」といった理由からも人気を集めています。手軽に実現できる“カジュアルな海外挙式”として選ばれています。
- ③アジア(ビーチリゾート含む)(5.6%)
バリ島やモルディブ、モンゴルなど、個性豊かなアジア各地のリゾートも注目されています。定番リゾートとは一味違う、特別な体験を求めるカップルに人気です。現地の民族衣装をまとった挙式スタイルもあり、文化や風土を楽しみながらのセレモニーが叶います。
- ④ヨーロッパ(8.9%)
憧れの街や歴史的な建物が数多くあるヨーロッパは、「せっかくの挙式と新婚旅行だから」と選ばれることが多いエリア。長期の休暇を活用して訪れるカップルが多く、パリやフィレンツェ、ローマなどでは、由緒ある教会やお城での挙式が人気です。映画のようなロマンチックな一日が過ごせます。
- ⑤オーストラリア・ニュージーランド(1.8%)
時差がほとんどなく、日本を夜に出発すれば翌朝には現地に到着できるなど、効率の良いスケジュールが組める点が魅力。年間300日ほど晴天が続く地域も多く、天候に左右されにくいのも安心材料です。大自然に囲まれた雄大なロケーションで、のびやかで開放感のある挙式が楽しめます。